本当は怖いトランス脂肪酸。あなたはまだその全てを知らない。

日本以外の各国では規制されていると噂のトランス脂肪酸。
その噂は本当か?そしてなぜカラダに悪いのか?
全て解説します!
こんにちは、みのです。
さて脂肪シリーズ第3弾です。
今回はトランス脂肪酸について。
ちなみに以前の記事はこちら。
第1弾:フィッシュオイル記事。
第2弾:コレステロール記事。
脂肪三兄弟の最後にして、日本ではあまり注目されていないトランス脂肪酸についてです。
では早速参りましょう!
結論
平均的な摂取量では問題がないが、マーガリン・ショートニングは避けるのが吉!
トランス脂肪酸の構造
まずトランス脂肪酸自身についてです。
みのもその構造等は知っていたのですが、どんな働きをして、それがどのように健康被害を出しているのかまではわからなかったので調べました。
では「アテローム性動脈硬化」とはなにか?
「アテローム」は「プラーク」という意味。
つまり一般的に言われる動脈硬化は「アテローム性動脈硬化」のようだ。
すなわちトランス脂肪酸は動脈硬化を亢進させる。ということ。
— みの@モテボディメイク (@taiikukai_mino) 2018年3月2日
(みのもわからないことがあったら調べるのです。当然ですが。笑)
ではまずは知っていたところから説明していきますね。
ここからは脂肪酸の復習とトランス脂肪酸の構造的を解説していきます。
ということで…またこの形式を使いましょう。(笑)
脂肪酸の復習
トランス脂肪酸とはなにか?
まずトランス脂肪酸の構造について説明します。
何が「トランスか?」という話ですが、これは結合部分のお話です。
脂肪酸長男(フィッシュオイル)の記事で説明しましたが、脂肪酸とは炭素鎖(炭素の長い鎖)に-COOH(カルボキシ基)がくっついたものです。
こういう構造(中性脂肪の構造から引用)。
これが「脂肪酸である証」です。
次に飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸の区分について。
飽和?不飽和脂肪酸?
これは脂肪酸の構造内に二重結合があるかどうかの違いです。
二重結合とは通常1本腕で手を繋いでる炭素同士が2本腕で手を繋いでいる状態です。
これを詳細に書くとこうなります。
トランスとは?
水素付加とは?
単結合、二重結合、三重結合はそれぞれこのように結合していますが、二重結合炭素(エチレン)に水素分子がやってきたらどうなるでしょうか?
答え。
こうなります。
つまり2本の腕で手を繋いでいた炭素同士が、1本離してそれぞれ水素と繋がります。
これが水素付加(水素添加)です。
炭素と手を繋いでいる物質が水素以外の場合
ここまでの例は炭素の4つの腕を埋めているのはもう1つの炭素と水素でした。
ですがフィッシュオイルの例でも見ましたが、実際の脂肪酸は炭素がたくさん連なって作られています。
ということで次は炭素が4つの場合を考えてみましょう。
CH3-C≡C-CH3 という物質を例にしてみます。
このときH-Hは下から来たとします。
すると2つのHはそれぞれ上と下に付く場合があります。
このときHが二重結合を挟んで同じ側にある場合をcis(シス)型、反対側をtrans(トランス)型と呼びます。
(本来は水素ではなくそれ以外の物質の位置関係で判断しますが、今回は水素と同義なので無視。)
つまりトランス脂肪酸とは、「狂った」とか「トリップ」といった意味ではなく、構造の話です。
ちなみにシスでもトランスでも化学式は変わりません。
上の物質はどちらの場合もCH3CHCHCH3(C4H8)です。
このような関係を幾何異性体と言います。
どういうことかというと、こういうことです。
片面焼きと両面焼きの違いはあるものの、どちらも目玉焼きですよね?
幾何異性体の関係性はまさにこれです。
状態は異なりますが、どちらも同じ物質という例です。
また、幾何異性体が存在するのは二重結合以上の結合を含む化合物のみです。
二重結合を変えると何が変わるのか?
二重結合が複数ある場合
ここまで見てきた例は二重結合が1つの場合でしたが、複数あるとどうなるか?
答えは簡単です。
複雑性が増します。
二重結合が1部分ならシス+トランスで場合の数は2でした。
次に二重結合が2部分なら?
2✕2で場合の数は4。
その場合分けは
- 1つ目の二重結合がシスで2つ目もシス
- 1つ目がシスで2つ目がトランス
- 1つ目がトランスで2つ目がシス
- 1つ目がトランスで2つ目もトランス
の4通りです。
(まさに高校数学の場合の数ですが…笑)
なので二重結合が一つづつ増えていくと複雑性は✕2(二乗)されます。
二重結合の数 | 1 | 2 | 3 | ・・・ | n |
異性体の数 | 2 | 4 | 8 | ・・・ | 2n |
こうして炭素を多く含む脂肪酸は多様な形態を生むのです。
二重結合が複数あり水素付加する場合
もう一度水素付加に話を戻しますが、二重結合が複数あった場合はその二重結合に対してそれぞれ水素を付加「する/しない」を選ぶことができます。
この場合も場合の数も先程同様、2nで表すことができます。
二重結合の数 | 1 | 2 | 3 | ・・・ | n |
水素付加によってできる物質の種類 | 2 | 4 | 8 | ・・・ | 2n |
それはつまり「全て単結合にすることもできるし、いくつか二重結合を残すこともできる」ということです。
つまり二重結合の数が選択的になったということです。
すると何が出来るようになるのか?
答えは融点のコントロールです。
二重結合は融点に影響を与える
融点とは何か?
バターもマーガリンもサラダ油も全て油です。
しかしこれら3つを冷蔵庫から真夏の部屋に出して1時間放置すると状態は見事に変化します。
おそらくこのようになるはず。
冷蔵庫(4℃) | 真夏の室温(40℃) | |
マーガリン | 固体 | 固体 |
バター | 固体 | 液体 |
サラダ油 | 液体 | 液体 |
つまりマーガリン、サラダ油は4℃~30℃の間で状態変化がないのです。
バターのみ固体→液体へ変化するということが思考実験からわかると思います。
(※ちなみにバターは40℃で固体脂指数が0、すなわち完全な液体になる。)
固体から液体への状態変化が起きる温度を融点(Melting Point)、液体から気体になる温度を沸点(Boiling Point)といいます。
つまりバター、マーガリン、サラダ油が同じ油脂であるにも関わらず、状態が異なるのは融点が異なるからです。
上の表で言うと、下に行くほど融点が低い。
そして炭素の数が同じであるのであれば、二重結合多いほうが融点は低いです。
ここがすごく大事。
なぜならだからこそ水素付加をするから。
他にも二重結合の場所や炭素数も融点に影響を与えますが、今回は省きます。
はい、ここで合流です。
マーガリンはなぜ身体に良くないのか?
マーガリンの特徴
これまでの長い化学的構造の勉強は全てここに繋がります。
つまりバターは溶けやすく扱いづらいので、水素付加して二重結合の数を減らし、融点を低くし扱いやすくするのです。
こうしてできた物質がマーガリン。
液体の油へ水素付加を施し、固体にして利便性を高めたバターの代用品なのです。
マーガリンの起こりはナポレオン3世が統治したかつてのフランス。
当時は隣国プロシアとの戦争でバターが大変枯渇していたため、政府がバター代用品の案を募集したところメージュ・ムーリという科学者が考案し、見事採用されたのがこのマーガリンでした。
マーガリンの製造方法
マーガリンは液体の油に水素を付加して固体化します。
まず原料からバターと異なりますね?
バターは動物性脂肪、マーガリンは植物性脂肪です(だからこそ一時期は動物性脂肪のバター消費量を減らして植物性脂肪のマーガリンを摂取しましょうという風潮でしたが、トランス脂肪酸の影響により撤回。これは後ほど解説します。)。
原料となるのはヤシ油、パーム油、ダイズ油、綿実油、コーン油、サフラワー(紅花油)、ナタネ油などの植物油です。
ちなみにYouTubeで検索したらマーガリンができるまでという動画がありました。
このようにしてマーガリンは精製されるのですが、肝心の水素付加(硬化)工程はマニアック過ぎて端折られていました。
みのが補足しておくと、液体の油が充填されているタンクに水素ガスを注入して高速で撹拌します。
液体の植物油に物理的に水素分子をぶつけるようです。
意外と原始的な工程ですね。笑
とはいえ原子番号100以上の人工的に作られる元素というのは、全て超高速の中性子を対象原子核にぶつけるというなんとも古典的な方法で作られるので、ものづくりはどこまでいっても古典的なものなのかもしれません。はい、余談です。
製造工程で生まれれる、不都合なトランス異性体
それでこの水素付加の工程でシス型が生まれるのか、トランス型が生まれるのかは原則確率次第です。
おそらくどちらかを多く作る触媒や工程等もありそうですが、みのは乳清業者の社員ではないので詳しくは知りません。
素人がダーツをして右半分に当たるのか、左半分に当たるのか?程度の違いです。
そして利き手によってどちらかに偏りが合っても、誤差の範囲ということですね。
原理的にはシス:トランス=50:50に近い値に落ち着くはずです。
(※これ関係者の方が読んでいて、本当は違うよ!というご指摘あったら教えてください。)
肝心の摂取量ですが、平均的なマーガリン大さじ1杯(13g)には0.7gのトランス脂肪酸が含まれています。
ですがここは企業努力の甲斐もあって製品によって含有量は大きく異なるようです。
雪印のネオソフトなどは0.1gですし。
つまりこの水素付加によって生じるトランス型の脂肪酸が身体にとってよくないということです。
トランス脂肪酸がもたらす健康被害
トランス脂肪酸による被害が疑われる疾病
ではトランス脂肪酸はなぜ健康被害をもたらすのでしょうか?
ネットやコラムでは「体重増加」や「悪玉コレステロールが増加する」ということを言っています。
が、みのの立場は「悪玉コレステロール自体が健康被害の原因ではない」です。
詳しくはコレステロール記事で勉強してください。
では何をもたらすのか?
それは主に心疾患です。
動脈硬化や心臓疾患を引き起こします。
特に妊婦や子供への影響は大きいと考えられています。
また、その他にも以下のような症状への関連が疑われています。
- 認知症
- 統合失調症
- 鬱
- ホルモンバランスの乱れ
- クローン病の原因
上記は「疑われている」に過ぎませんが。
ちなみに2004年にEFSA(欧州食品安全機関)が提出した意見書にはガン、2型糖尿病、アレルギーとトランス脂肪酸摂取の関連性は「弱い(weak)」または「一貫性がない(inconsistent)」としています。
「アメリカではガンとトランス脂肪酸の摂取量が比例している」という意見は擬似相関です。
トランス脂肪酸が引き起こすアテローム性動脈硬化症とは?
トランス脂肪酸が引き起こすのはアテローム性動脈硬化症といわれる動脈硬化です。
動脈硬化自体は読んで字のごとく「動脈」が「硬化」するわけです。
すると何が不都合か?
通常血管はホースのように軽く伸び縮みします。
この弾性によって急激に流れる水量が増加してもホースが破れないようなシステムになっています。
一方、このホースがある程度の柔らかさを持たない、全く硬い材質で作られていたらどうでしょうか?
例えばプラスチック。
プラスチックのホースは一見頑丈そうですが、素材が耐えられない水圧がかかった際に、いとも簡単に破裂してしまいます。
これがホースなら当たりが水浸しになる程度で済むのでまだよいですが、血管だったらどうでしょうか?
血管は破裂し、血液が体内に漏れ出してしまいます。
そればかりではなく、動脈硬化症は心臓発作および脳卒中を引き起こします。
これが動脈硬化の怖さです。
まとめるとトランス脂肪酸の摂取は以下のような過程を経て疾病を引き起こします。
トランス脂肪酸摂取
アテローム性動脈硬化症発症
心筋梗塞・脳卒中
動脈硬化には以下の3つの分類が存在します。
- アテローム性動脈硬化(粥状動脈硬化)
- 細動脈硬化
- 中膜石灰化硬化(メンケベルグ硬化)
ですが一般的に言われている動脈硬化はほとんどがこの「アテローム性」です。
アテロームとはプラークのことで、血管に癒着したプラーク内に「脂質」「炎症細胞」「平滑筋細胞」「結合組織」が含まれます。
このプラークが成長することにより血管を通る血液量が減ったり、プラーク自体が剥がれることで血管が詰まったりもします。
以下がアテローム性動脈硬化の起こり方です。

https://www.med.or.jp/chishiki/doumyakukouka/002.html
そしてこれまでの研究でトランス脂肪酸とアテローム性動脈硬化症の関連性については示唆されていました。
これまでに疑われていたメカニズムは以下のとおりです。(それぞれが下を活性化する。)
東北大学が解明したトランス脂肪酸がアテローム性動脈硬化を引き起こすメカニズム
これまではおそらくこのようなメカニズムになっていると思われていましたが、昨年2017年の5月に東北大学の研究室がこのメカニズムを解明したと発表しました。
詳細を述べると
「トランス脂肪酸は活性酸素種を増加させることなく、ASK1キナーゼを直接活性化する細胞外ATPおよびCaMKIIと呼ばれる別のキナーゼを増強することによって細胞死を促進する」
ということです。
これだけだと何を言っているのかわからないので、同じくチャート化するとこのようになります。
つまり細胞外ATPやCaMKⅡが直接細胞死を誘発しているということがわかりました。
念の為左右に並べてみると、ずいぶん簡素化しているのがわかります。


どのみち結論はトランス脂肪酸は動脈硬化を引き起こすということに変わりはありませんが、念のため記載です。
(どのサイトもトランス脂肪酸が動脈硬化を引き起こす!ということしか書いてなかったので、きちんとメカニズムを記しておきます。)
該当のプレスリリースはこちら。
マーガリンに対する誤解
「マーガリンは食べるプラスチックだ!」
トランス脂肪酸がカラダに悪いことは疑いようのないことなのですが、それとはまた違った批判をしている人もいます。
マーガリンの例だと「マーガリンの構造を見るとプラスチックによく似ている」というアレです。
「マーガリン プラスチック」でググると結構なサイトが出てきます。
さらにマーガリンやトランス脂肪酸の危険性を謳ったサイトでも同様の記載は多く目にしました。
以下一例。
断言します。
んなこたーない。
まずは事実から。
下図はトランス脂肪酸の構造。
これはエライジン酸というオレイン酸のトランス型脂肪酸。
オレイン酸とは椿オイルの髪にいいと言われる成分。
一方プラスチックの代表例、ポリエチレンテレフタラート。
ちなみにプラスチックの定義はJISによると
「高分子物質(合成樹脂が大部分である)を主原料として人工的に有用な形状に形作られた固体である。ただし、ゴム・塗料・接着剤などは除外される。」
とのこと。
そしてポリエチレンテレフタレートとは何のことはない、その短縮形がPET つまりペットボトルのPET(PolyEthylene Terephthalate)部分のことです。
ペットボトル画像
「え??どこが似てるの?」となりません?
そう、似てないのです。
これは、デマ。
ちなみにPET の構造で()n 書いてあるのはこの構造が無限に続くということです。
一番右の-CH2- まで来ると、次に一番左の-O- が続きます。
はい、復習です。
脂肪酸は必ず何を持ちますか?
。。。
そう、カルボキシ基(-COOH)です。
ではPET にはカルボキシ基がありますか?
はい、ありません。
しかもなにやら見たことのない亀の甲羅みたいなやつも含まれています。
(これはベンゼン環といい、六角形の頂点にそれぞれ炭素が存在する化合物です。図はこちら)

一般図

詳細図
つまり「マーガリンはプラスチックと構造が似ている!!」と騒いでいる人は、実際にはその構造すら見ずに発言しているに過ぎません。
見ていたら100%わかるはずなんです。
構造が違うことなんて。
カルボキシ基もないし、亀の甲羅はついているし、脂肪酸はn とかついていないんで。
そもそもnがつくっていうことは繰り返しなので炭素数字体が数百万になります。
フィッシュオイル記事で学んだ炭素の数(DHAだと22個)とは桁が段違いです。
にもかかわらず「プラスチックだ〜!!!」とか叫んでいるのは、放射脳と言われても仕方ないです。
(よく見てみるとどちらも「自然由来の食品が健康にいい!」系団体ですね。)
ではなぜ「油のプラスチック化」などと呼ばれるのでしょうか?
それはかつて欧米からの研究を輸入して訳した際に、素人が「plastic oil」という記述をバカ正直に「プラスチックオイル」と訳したのがそもそもの始まり。
化学的には「plastic」とは「可塑性」のこと。
可塑性とは「固定に力を加えて変形させても元に戻らない性質」のことです。
マーガリンをトーストに塗ったあと、食べるまでの間に元の固体に戻ったら気味悪いですよね?
そうした「力を加えて思い通りのカタチに変えられる性質のこと」、これが可塑性です。
つまりマーガリンは「plastic oil」(可塑性をもつ油脂)です。
にもかかわらず「オイルのプラスチック化」や「プラスチック化した油」と真顔で使っている医師や薬剤師、調理師がいたら免許返上ものです。
(実際にそういうことを言う輩がいるから、こうした記述をするのですが。)
あ、ちなみに「だからマーガリンは安全!!」と言っているのではありません。
あくまでもトランス脂肪酸は最悪です。
その上で批判の仕方が間違っているという話。
次。
「マーガリンは人工物だから腐らない!!」
「バターは放置しておくと腐るのに、マーガリンは腐らないじゃないか!それはマーガリンが人工物だからだ!」という理論ですね?
なるほど。
ここからは禅問答形式でお届けします。
マーガリンは人工物だからカラダに悪いんだ~~~!!!
某デモ集団
では聞きますが、バターの原料はご存知ですか?
みの
バカにしてるのか!??
牛乳に決まっているだろ!
某デモ集団
そうですよね。
さすが聡明です。
みの
ではマーガリンの原料は?
みの
パーム油やコーン油など
某デモ集団
それらはなんの油ですか?
みの
植物油に決まっているだろ!
某デモ集団
では植物油、例えばサラダ油は常温保存しておくと腐りますか?
みの
…。
某デモ集団
勉強し直してきてください。
みの
以上です。
腐るということは微生物が成長する土壌が整っているということです。
動物性脂肪のバターには微生物の養分となる成分が豊富に含まれています。
しかし植物性脂肪のマーガリン、ひいては素となる植物油には養分があまり含まれておりません。
この違いですね。
ということで、マーガリンの批判は的はずれなものばかりということは解説しましたが、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸はどう考えても有害なので摂取を控えた方が懸命です。
日本のトランス脂肪酸事情
あなたの身近に潜むトランス脂肪酸
では次にあなたが日頃口にするかもしれないトランス脂肪酸を数値として記しておきます。
データは農林水産省のHPから引っ張ってきました。含有量が特に多いものだけ記載します。
詳細な食品が気になる方はこちらから確認してください。
品名 | 脂質含有量(g/100g) | トランス脂肪酸含有量(g/100g) |
クロワッサン | 17.1~26.6 | 0.29~3.0 |
味付けポップコーン | 36.8 | 13 |
牛(ハラミ) | 29.6~59.4 | 0.79~1.5 |
コーヒークリーム | 11.3~31.7 | 0.011~3.4 |
コンパウンドクリーム | 27.9~41.1 | 9.0~12 |
バター | 81.7~84.7 | 1.7~2.2 |
マーガリン | 81.5~85.5 | 0.36~13 |
ショートニング | 100 | 1.2~31 |
菓子パイ | 23.7~37.7 | 0.3~7.3 |
ハヤシルウ | 26.9~36.2 | 0.51~4.6 |
どれもスーパーで普通に売られている身近な食品ですね?
ではこうしたトランス脂肪酸に対して、日本はどのような対応をとっているのでしょうか?
世界の対応
まずWHO の勧告を見てみましょう。
2003年にWHO とFAO は、
トランス脂肪酸は心臓疾患のリスク増加との強い関連が報告され、また摂取量は全カロリーの1%未満にする
との勧告を出しました。
この勧告を受けて世界各国はどのような対応をとったのでしょうか?
アメリカの場合
自国産業を保護するために規制の緩いアメリカですが、トランス脂肪酸については珍しく前のめりな姿勢を見せました。
幾つかの州での訴訟を受け、2018年6月18日よりトランス脂肪酸の規制が開始することとなりました。
この規制は日本では「米国トランス脂肪酸全面禁止へ!」と報道がされました。


しかしこのFDAの決定はあくまでも
硬化油(部分水素添加油)を食品に使用する場合は、合理的な根拠によって無害であることが保証できるデータと共に、PHOを使用する際は食品添加物としてFDAに届け出なければならない
という規定を定めたに過ぎません。
つまり無害と分かる資料を提出すればトランス脂肪酸を添加物扱いできるということです。
とは言え禁止されているものを無害だからとわざわざ添加してある商品を買うほど消費者もバカではないので、実質禁止なんでしょうけど…
う~ん、どうも歪んで伝えられてますよね?
こういうのはわかっててやっていると思うのですが、本当にやめてほしいですね。
とにかくアメリカは実質トランス脂肪酸が禁止です。
その他の国の対応一覧
ではアメリカ以外の国はどのような対応なのでしょうか?
一覧にまとめましたので確認してください。
国名 | 対応 | 年数 |
カナダ | トランス脂肪酸を含む全ての食品の製造・輸入販売禁止 | 2018/9/15 |
デンマーク | 全脂質の2%まで | 2004年 |
オーストリア | 含有量が2/100(g)以上の油脂の流通禁止 | 2009/9 |
アイスランド | デンマークに順する | ー |
イギリス | 1日の摂取脂質のうち2%以下にすること | ー |
ドイツ | 食品表示方に基づく表記義務のみ | 2010/12 |
中国 | 表示を義務化 | 2011/10/12 |
韓国 | 表示を義務化 | 2007/12 |
肝心の日本では?
日本の規制状況
実は日本では表示義務や規制は行われておりません。(2018/03時点)
これには理由があって、2007年の調査で日本人が1日に摂取するトランス脂肪酸の平均は全カロリー中0.3~0.6%ということがわかっています(食品安全委員会の季刊誌30号)。
この数値がWHOの勧告値の「1%未満」の範囲内に十分収まっているために、「現状問題なし」との判断が下されているわけです。
ですがこの判断は正しいのでしょうか?
みのは間違っていると思います。
理由はこの農林水産省の発表から読み取れます。
「平均的にみれば日本人のトランス脂肪酸による健康リスクは低い」
健康って平均値ですか?
1年に風邪を1度もひかないAさんと、毎月風邪引くBさんの平均値は年に6回風邪をひくとなります。
ですがこの値には何の意味もありません。
みな「自分が健康でいられるか」のみ関心があるのです。
とするのであれば、日本人全体としてではなく、個人がどうなのかを考えるべきです。
ということで日本人のトランス脂肪酸摂取量をプロットするとおそらくこのようになります。
そう、標準偏差です。
これはみのの憶測ですが、平均が0.3~0.6%ということは、おそらくここらへんが0.3~0.6%ではないでしょうか?
とすると、摂取量が高い区分の人は確実にオーバーします。
一般的にトランス脂肪酸含有量が高い食品はジャンク食品です。
ファストフードやスナックを日常的に摂取する人は、いともたやすく1%を超えてしまうと思います。
毎朝トースト2枚にそれぞれマーガリン1スクープ塗っている人はそれだけで1.4gです。
さらにそもそも摂取カロリー自体が少ない人は、多い人と比べて同じ量のトランス脂肪酸でも比率が上がってしまうことがあるので注意が必要です。
世界から取り残される日本
国単位で規制が異なる場合、世界チェーンの企業はどのような対応を取るのでしょうか?
例えばスターバックス・コーヒー。
本国アメリカではトランス脂肪酸を使った商品は一切取り扱っていません。
しかし規制のない日本ではコストダウンの観点から、トランス脂肪酸を排除していません。
例えばマクドナルド。
アメリカではポテトを揚げる油にノントランスオイルを用いていますが、日本ではガンガン入っています。
そちらのほうが安いので。
規制がないと、こうしてどんどん付け込まれてしまうのですよね。
まとめ
よくあるコラムでは「現在の摂取量も確認せずにアメリカが規制したから日本も規制しろ!と市民団体が騒いでるだけ」という寄稿もあります。
しかし本当にそうなのでしょうか?
カラダに悪いとお墨付きのトランス脂肪酸を、日本はこのまま規制しなくてよいと思いますか?
「トランス脂肪酸を除いてもバター等の動物性脂肪の摂取量が増えるので意味がない!根本的な食生活の改善が必要だ!」という意見は最もです。
最もですが動物性脂肪自体は生命維持に必須の物質です。
なのでこちらは量の問題。
ですがトランス脂肪酸はそもそもいらないものです。
量で調整という問題ではないです。
としたら、そもそも使用しない、口に入らないという対策が必要なのではないでしょうか?
政府が規制をかけなくても、口に入らないように自身で気をつけることはできます。
マーガリン、ショートニングは避けるのが懸命です。
自分の身を守れるのは、あなただけです。
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みの

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Comment
トランス脂肪酸についての解説がとても分かりやすく、大変勉強になりました。
>上の表で言うと、下に行くほど融点が高い。
そして炭素の数が同じであるのであれば、二重結合多いほうが融点は高いです。
下に行くほど低い温度でとけるので、下に行くほど融点は低いように思えるのですが、
その考えは間違っていますでしょうか。
また、二重結合が多い方が不飽和脂肪酸で、それがグリセリンとエステル結合したものが
脂肪油となって、常温で液体なので、二重結合が多いほど融点は低い気がするのですが。
おかしいでしょうか?
@TH様
コメントありがとうございます。
>>下に行くほど低い温度でとけるの
その考えは間違っていますでしょうか
ご指摘ありがとうございます。
おっしゃるとおり誤表記ですね。
失礼いたしました。
>>二重結合が多いほど融点は低い気がするので
こちらも合わせて間違っていますね。
二重結合が多いほど融点が上がるのであれば、水素付加によって二重結合を減らすのではなく、
脱水によって二重結合を増やすますよね。
合わせてありがとうございます。
みの